体が適切な機能をし始めると、身体の中に重力フローが流れ始める。
すると体は自然に癒しを始める。
〜アイダ ロルフ博士の言葉 Gospel of Rolfingより〜
ロルフィングは、独自の手技を通して筋膜(結合組織)への働きかけと、知覚機能をとおしての主体的な参加による共同作業により、身体の中心空間(あるいは階層構造)の存在に気づき、中心空間(あるいは各階層)に沿って重力の流れが生まれる事で、姿勢の統合へと導く身体教育的側面のあるセッションプログラムです。
10のテーマでシリーズが構成され、順を追って身体と重力とが調和しながら姿勢統合のプロセスを定着させていくのが特徴です。
重力に対して姿勢統合が始まると、健全な姿勢の自己調整の精度が高まります。その結果として「身のおきどころ」が見つけられたり、長時間の姿勢保持がつづいても疲れづらい身体作りにつながていくといわれています。
ロルフィングは、身体の構造的統合の技法(「地球の重力に対して一番無理のない姿勢を取り戻す方法」)として、アイダ ロルフ博士が理論をまとめ実践していたものです。
創始者であるアイダ ロルフ博士は1896年 ニューヨーク生まれ。
コロンビア大学 医学部で生化学の博士号を取得。その後、ロックフェラー研究所での研究を経てスイスの工科大学で数学と原子物理学を研究した当時では数少ない女性研究者でした。
医学の枠組みのみならず、ホメオパシー、オステオパシー、カイロプラクティック、密教(タントラ)、ヨガ、アレクサンダーテクニーク、コージプスキー理論などを勉強し、慢性的な不具合を抱える人々への手当てをしていました。
1950年代頃より“Structure Integration(身体の構造的統合法)”として理論と技法を、彼女を慕うの人たちに教え始めました。
ロルフィングの由来は、その時の生徒たちが彼女の名前にちなんで名付けられました。
1960年代〜彼女のワークの評判の高さは徐々に広まり、F・パールズ A・マズロー W・シュルツ等でにぎわっていた米国カリフォルニアのエサレン研究所に招かれて“ロルフィングStructure Integration(身体の構造的統合法)”の理論と技法を指導し始めるようになります。
それが転機となり、科学的な研究が行われ効果が示され、ヨーロッパや南米にも広く知られるようになっていきます。
1971年に、ロルフィングの普及と施術者の育成を目的に米国コロラド州ボルダーに「ロルフ研究所」が設立され、今日に至っています。
ロルフ博士の理論のユニークな点は3つあります。①筋膜(結合組織)の可塑性と伸縮性にいち早く着目したこと ②身体全体の重力バランスと重力との関係性に着目していること。③「部分の機能」と「身体丸ごと」との調和(ホリズム)に着目していることです。
例えば、慢性的な不具合を持つ人の伸縮性を失った筋膜組織に働きかけます。すると、結合組織の繊維芽細胞が生成されることで本来備わっていた伸縮性が回復されます。その結果、全身の筋膜の張力バランスと身体構造に作用する地球の重力バランスとが互いに自然に調和し、不具合を来す姿勢習慣から徐々に開放されていく事が実現していきます。
重力バランスが身体全体として取れた姿勢となる。まずは、それが身体の構造的統合の1つの目的となります。その統合された姿勢は内なる健やかさと可能性を産み出す土台となり、姿勢は静的な状態のみならず、動的な姿勢としても、それぞれが調和と洗練を繰り返し続けながら、全体としてまとまっていくという、『複合体として変化統合し続けていくもの』として身体構造をとらえています。
常に絶え間なく作用している重力に対して、身体の構造や動きだけではなく、心の姿勢をも柔軟にさせ、身体表現のskill(日常生活での姿勢・動きやパフォーマンスなど)の基礎となる“身体の構造と機能“への理解と気づきを深める身体技法として注目されています。
ロルフ博士は、伝統的な医学をもとに、その枠にとどまらず『人は本来ホリスティックな存在』として、人間の健やかな姿勢のあり方を追求し、新たな身体の健康の起点を作り上げたのです。
慢性的な不具合を抱える方はもとより、音楽家や身体表現を求められる、スポーツ選手・舞踏家やチアリーダーなど、身体を使っての表現の質を磨いてゆきたい方や、自分で自分の身体をハードに使いながらも根本的に細やかにケアしメンテナンスする方法を知りたい方、生涯自立(自律)した身体で存分に生きたいと願う人達に最適なセッションプログラムです。
ロルフィングの独自なセッションの方法として、シリーズでセッションが組み立てられているのが特徴です。
姿勢統合の10のテーマを身につけるため、10シリーズセッションとポストシリーズセッションの大きく2つから構成されています。
表層Phase |
session1:呼吸
「足の目を開き、地中深くと繫がる」 |
深層Phase |
session4:内側(ミィディアル)ライン 「頭頂部を開放し、天高く空へと繋がる」 |
統合Phase |
session8:構造と機能 session9:空間と方向 session10:自由さ・重力との協調的関係性 (その方の個性や身体の傾向性にあわせて、オーダーメイドで調律していきます。) |
(参考文献)
1) Ida Rolf 著『ROLFING PHYSICAL REARITY』Healing Arts Press
2) グラバア俊子 著『新ボディーワークのすすめ』創元社
3) 藤本 靖:『総説』ロルフィング概説 An out line of Rolfing. 日本補完代替医療学会誌 第2巻 第1号:37〜43,2005
ロルフィングは、常に作用している重力を身体の中に受け入れ通す仕組みを身体の中の環境として育ていく教育的な特色があります。
姿勢矯正や歪みの修正との大きな違いは、身体構造の統合という新しい観点で身体をとらえて、自覚的に、動いて感じて受け入れて身につけくいるところです。下図のチャートのように変化統合のサイクル巡り始めます。そして身体の内部環境として定着します。さらに統合されて整った姿勢は統合のプロセスを繰り返しながら永続的に続いていきます。
なぜなら、重力は、途切れることなく、常に作用しているからです。
姿勢の変化から統合へ、そして統合からさらなる洗練へとプロセスが進んでいきます。
しずく堂のロルフィングを体験下さった皆様の貴重なお声をもとにチャートとしてまとめさせて頂きました